ヴァナ・ディールの詩

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群れ立つ使者は

『カッファル伯爵邸』
南サンドリアの最西端にある豪邸。
カッファル伯爵本人はすでに亡くなっているが、ヒナリー夫人が一人で邸宅を管理している。

プリッシュの行方を捜すウルミアは、ヒナリー夫人の好意により、伯爵邸に滞在していた。
現在、プリッシュはジュノから手配されているため、目立った行動はできない。
サンドリアで、地道に情報を集める日々が続いていたのだった。

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今日もダメだった…飛空艇を空しい気持ちで眺めながら、ウルミアはため息をついた。
サンドリアに滞在してから、昼間はヒナリー夫人の紹介を受けた人々を訪ね歩き、夜は港にある酒場付近で、歌を歌いながら情報を集める日々が続いていた。
飛空艇が到着する度、もしやプリッシュが乗ってはいないかと、発着場を見つめるものの、彼女の僅かな期待が叶えられる事はなかった。
「ねぇねぇ、そこの歌うたい、ここで誰かを探してるんだって?」
ウルミアが振り返ると、そこには、半ズボンに、虎を模ったマスクを被ったミスラが立っていた。
港に通い始めてから、彼女の歌声と美貌に惹かれ、声をかけてくる男は多かったが、このミスラは毛色が違うようだ。
冒険者だろうか?戸惑いながら、ウルミアは答えた。
「ええ…青い髪で、神学生の格好をした女の子を捜しているんです。何かご存知ですか?」
「フーン。その特徴って、ジュノから手配されてるコに似てるね」
ミスラの言葉に、ウルミアは焦りを隠せなかった。一般のサンドリア民ならともかく、各地で噂を耳にする事の多い冒険者であれば、気付いても当然の事かもしれない。

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「…あなたは、その少女を捜すようにジュノに雇われた方ですか?」
必死に相手の素性を探ろうとするウルミアの質問には答えず、ミスラは話を続ける。
「もう一人手配されてる男の子がいるよね?そのコ達は、仲良く逃避行なのかな?」
それは、ウルミアにとっても知りたい事だった。少年の行方は、仲間達が捜索しているはずだが、連絡がないところをみると、自分と同じ様に、難航しているのが想像できた。
彼女が何も知らないと判断したのだろう、ミスラはその場を立ち去ろうとしていた。
一方的に質問され、何の手がかりも得られていない事を再認識させられたウルミアは、悔しさも手伝い、強い口調でミスラを呼び止めた。
「ちょっと待って下さい!その少年と少女の事、あなたは何かご存知なのですか!?」
その言葉に振り返ったミスラの表情は、先程までとは一変していた。瞳孔が狭まり、まるで獲物を狙うかの様なその視線に、ウルミアは言葉を続ける事ができなかった。
「…歌うたい、人を食った質問は、自分が食われてもいい時だけにしておいたほうがいいよ」
立ち尽くすウルミアに興味を失ったのか、ミスラはそれ以上言葉を発する事なく背を向ける。
彼女の姿が完全に見えなくなるまで、ウルミアは、動く事ができなかった。

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「あらウルミアさんお帰りなさい。その様子だと…今日も手がかりはなかったみたいね」
憔悴して戻ったウルミアを、カッファル伯爵夫人、ヒナリーが心配そうに出迎えた。
ウルミアの表情が冴えないのは、手がかりが見つからなかったせいだけではなかったが、それを夫人に悟られなかったのは幸いだった。
プリッシュが手配されている事を知りながらも、その友人であるウルミアを屋敷に滞在させ、色々と心を砕いてくれるこの親切な老婦人に、これ以上の心配をかけたくなかった。
当たり障りの無い話をしながら、遅い夕食をとろうとしていた時、夫人が言った。
「そうだわ、うっかりしていてごめんなさい。今日あなたにお客様が見えていらしたのよ」
サンドリア大聖堂の高僧、シャザルヴィージュが訪ねて来ていたという。
その名には覚えがあった。楽園の扉について訪ねて行った際、対応してくれた高僧だ。
「何でも、どうしてもあなたにお話したい事があるとかで…あ、ちょっとウルミアさん!」
「ありがとうございます!すぐに行って来ます!!」
明日でも、と言う夫人の言葉を聞き流し、ウルミアは屋敷を飛び出していた。
大聖堂の高僧なら、夜遅くまで残っているはずだ。今は、一刻も早く、どんな情報にでもすがりつきたい気持ちだった。
月明かりの照らすサンドリアを、ウルミアは走った。友の無事を信じ、力になるために。

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