ヴァナ・ディールの詩

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迎え火

『ウルガラン山脈』
クォン大陸で最も海抜の高い山岳地帯。
一部にオーク族の開いた山路が通っているが、険路の上、
入り組んだ地勢が生み出す、あらぬ方向より吹き付ける吹雪が、侵入者を固く拒んでいる。

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普段は吹き荒れる吹雪により、ただ歩く事すら困難なウルガラン山脈。
しかし、決意を胸に走るプリッシュを導くかの様に、吹雪は止み、視界は開けていた。
新雪には少女の足跡が点々と残り、後続の追跡者達への道標となっていたのだが、目的へ邁進するプリッシュにとって、それは大きな問題ではなかった。
「ここか…この穴が、あの氷湖へ通じる洞窟へ続いてるはずだな」
穴を覗き込んでいたプリッシュは、雪を踏みしめ、近づいてくる足音を感じた。
「足跡を辿って来てみれば…お前は氷河で倒れていた娘か?こんな所で何をしている?」
大剣を背負った、銀髪のエルヴァーンが、疑惑と警戒の入り混じった眼差しでプリッシュを見つめていた。
「私は、ルーヴランス・ミスタル、30年前の調査隊に関する事をここで調べている」
相手が得体の知れない少女とはいえ、先に名乗るのが騎士としての礼儀だと判断したのだろう。プリッシュにとって、見覚えのあるエルヴァーンは、聞き覚えのある名乗りを挙げた。
「…ああ、お前はそっちか。爺さんの仇は、その手で討てたのか?」
自身の真の目的を突然告げられたルーヴランスは、剣の柄に手をかけ、身構えた。
「なぜ、それを!?…そうか、お前が…!?」
ルーヴランスの問いに、少女は不敵な笑みを浮べると、顎で地面に空いた穴を指し示し、飛び降りていった。

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奇妙な光景だった。洞窟の通路で、小さな竜巻の様な物が、奥への侵入を拒んでいた。
「これは…結界か?」「まぁ俺にまかせておきな!」
進み出たプリッシュが手を翳すと、竜巻はおさまり、彼女は当然の様に先へと進んでいく。
そこには、大聖堂の広間程もあろうかという空間に、凍りついた湖が広がっていた。
美しい光景ではあったが、ルーヴランスに、それを楽しんでいる余裕はなかった。
ウルガラン山脈に、闇の神が眠り、闇の王が訪れた場所があると云う。ここがそうなのか。
必死に考えをまとめようとするルーヴランスに、彼の思考を読んだかのように、プリッシュが声をかけた。
「なぁ、お前が北の地で見た闇の血族の親玉、あれは何だとおもう?」
ルーヴランスはもう驚かなかった。この少女は、そういう存在なのだ。彼がそう理解し、口を開きかけた時、洞窟内を走る複数の足音が聞こえた。
しかし、同時に、彼は別の、人間ではない、妙な気配を感じとっていた。
氷湖に4人の人間が入って来た時、その気配は、明らかな殺気を帯びる。
「プリッシュ!」エルヴァーンの女性が、プリッシュに駆け寄ろうとする、その背後で動く影を、彼の目は捉えた。
「待て!安易に近づくな!」叫ぶと同時に、ルーヴランスは大剣を抜き放ち、影に向けて突き立てた。

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ルーヴランスの大剣は、巨大な白い塊の中程まで食い込んでいた。
スノール。火の玉の様なモンスター、ボムの氷属性版とでも云うべき存在だ。
北の地を調査していたルーヴランスは、スノールとの戦闘経験はあったが、ここまで巨大なものは初めてだった。
タルタルを一度に何人も飲み込めそうなその口からは、絶えず極寒の冷気が放出され、ルーヴランスを凍てつかせようとする。
さらなる攻撃を加えようと、スノールから大剣を引き抜こうとした時、ルーヴランスは、ある兆候を感じ取った。
人間と違い、モンスターは、必ずしも、生き残る事を目的として戦うわけではない。
アルカナ類と呼ばれる、魔法によって擬似的に生命を与えられた存在の中には、自身の滅びを厭わず、無差別に周囲を巻き込み、自爆するものすらいる。
加勢するべく、武器を構えたミスラ達に、ルーヴランスは叫んだ。
「いかん…!できるだけ遠くに離れろっ!!」
次の瞬間、彼の視界は白銀に覆われ、激しい衝撃と、凍てつく冷気が意識を奪っていった。

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彼が意識を取り戻した時、最初に目にしたのは、心配そうに自分を見つめる、美しいエルヴァーンの女性だった。
「良かった、気が付いたんですね、ルーヴランスさん」
あなたのおかげで全員無事だった、とその女性は言う。初対面にも関わらず、妙に親しげな態度は気になったが、おそらくプリッシュが自分の事を教えたのだろう、そう彼は納得した。
「おおっ!?」「近寄るな!忌むべき声に惑わされるぞ!」
声に身体を起こしたルーヴランスが見たのは、宙に浮いた、光り輝く角の様な物体だった。
「あれはタブナジアの魔石!30年前の調査隊員を惑わせた魔晶石だ!」
槍を背負ったミスラの言葉に、ルーヴランスは、祖父の死の元凶に辿り着いた事を知った。
遠巻きに魔石を見つめる人々の中から、一人、プリッシュだけが悠然と近づいて行く。
「戻ってきたな…おかえり、俺の魔晶石…」
その言葉に応える様に、魔石はゆっくりと光を失い、彼女の胸に、吸い込まれていった。

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